実在の英雄ということで、マット・デイモン演じるフランソワ・ピナールの造形がイマイチ薄い(キャラの陰影の、「陰」を描きづらいので)のが玉に瑕か。ま、小さな傷ですが。
それより気になったのが、劇中登場するオールブラックス(ラグビーニュージーランド代表)の試合前のウォークライ、ハカの踊りです。これが盛り上がるのは、ドラマ構成上はまずいんですよね。主役はスプリングボックス(同南アフリカ代表)なんだから。しかし、その勇ましさにやはり盛り上がってしまい、映画館の客席もしばしざわつく。
ところがどっこい、さすがイーストウッド、というのは気が早い。
オールブラックスの試合をテレビで観たことある人は知ってると思うけど、本物はそんなもんじゃない。魂が震えるとはこのことか、という、ものすごい迫力なのだ。(実際に見たらもっとすごいんだろうなあ。)
私が初めてハカを見たときは、最初に相手(サモアだったかな)がウォークライを敢行。(今思うに)オールブラックスのお株を奪うような勇壮な踊りに、観客は大喜び。ところがそのあと、本家オールブラックスがハカを披露。あからさまに格の違うそのド迫力に、観客の興奮は頂点に!相手選手は試合前から下を向いてしまうし、何なんだこれは、という感じでした。
そんなわけで、イーストウッド版ハカはある意味中途半端な感じに仕上がってしまいました。まあもしかしたら、観客がそれだけ記憶して帰ってもらっても困る、ということで押さえ気味に撮ったのかも知れませんが。
私が観た映画館の席の隣は若いカップルで、残念ながら最初から最後までしゃべり通し(予告編上映の際に挟まれる「上映中のマナーを守りましょう」の間もしゃべってるからね)、最後は自分たちが席をポップコーンまみれにしたのに大笑いして、それを拾う真似すらせず去っていきました。
映画に描かれたアパルトヘイトに怒りを覚え、ネルソンマンデラの神々しいまでの不屈の魂、それに応えて新しい国づくりのために尽くしたスプリングボックスの選手たちに感動しつつ(←何しろずっとしゃべってるもんで、彼らの感情は逐一伝わってくるわけです)、己のマナーは全く省みることもない、人間なんてそんなものか。まさに「インビクタス」(征服されざるもの)といったところ。おあとがよろしいようで。
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